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抽象喜劇(退治屋作者の超日常?改め)

Shortshort-001

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地下研究所

所長「とにかく… ここは殿様があの発言して以来、
   首長には必ず特産の秋刀魚をご馳走しなくては
   いけなくなったんだよ」
所長(30代男性)は、目の前にある広い池を眺め、
部下(20代半ばの女性)を説得するような語り口だった。
部下「それでもなぜ、地下にこんな養殖場まで…」
所長「年に一度はその食事会が行われるが、ここ最近
   『今回の秋刀魚は別の産地からではないのか』
   とクレームがついて是が非でもこの地で秋刀魚
   を生産しなくてはならなくなったのだよ…」
部下は、地下養殖所とは思えない広々とした池で泳ぐ
秋刀魚を見て、所長にたずねた。
部下「何で、もっとおおっぴらに地上でちゃんと養殖
   できないのでしょうか」
所長「結局、地上では土地が得られなかった、と言う
   だけの理由で地下養殖所となったわけだ。そう
   土地が得られなかったんだよ」
部下「なら、なぜ地下なのにちゃんと養殖できる広さ
   の場所を得られたのでしょうか」
所長「それは、たまたま運が良かっただけだよ」
部下「そうですか… 『運』で片付く問題なんですね」
苦笑いする所長。
小一時間して、養殖池から100尾単位で引き揚げられる
秋刀魚たち。脂の乗り具合から、いかにも旬の秋刀魚
である感じがうかがえる。
所長、部下に一言かける。
所長「たまには一緒に食事でもしないか衣緒(いお)君。
   無理なら別にこれ以上誘わないが」
部下「所長、ありがとうございます。是非ともご一緒
   させてくださいませ。ただ…」
所長「ただ、何ですかね」
部下「ただご馳走でしたら、諸般の事情も考えまして
   秋刀魚以外でお願いいたします」

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by hokutoff | 2006-10-24 04:36 | その他物語